森友学園問題:近畿財務局と業者の打ち合わせ記録はなぜ軽視されてきたのか

森友問題は結局、財務省の大チョンボ!? 3枚のメモから見えた真相(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

先日当ブログで文字起こしした、いわゆる「業者側の記録」が、今やこちらの記事内でクッキリとした画像で参照できる状態となった。

当該記事の内容自体は、事実確認が足りない箇所があるものの、現在明らかになっている情報から推定した内容としては、という留保をつければ比較的穏当なものと思う。

 

この記録は2月24日の共産党宮本岳志議員の質問において初めて広く世に知らされた資料である。当時は「独自資料」「爆弾」などと称された。

森友学園2/24宮本岳志(共産)の質疑書き起こし|Hikaruの井戸端放送局

撤去費用が地価を上回る可能性については、その後以下の記事で初めて言及されたように記憶している。

森友学園:ごみ撤去費10億円超想定か? 学校用地、算定の半年前 | 共同通信 ニュース | 沖縄タイムス+プラス

撤去費用が地価を上回る可能性があったのであれば、売却時に値引きされた8億円という額が不当に高いものではなかった可能性が強く推認される。この時点では「新たなゴミ」が発見されていなかったのであるから、なおさらである。

そうなると、森友学園問題の発端であるところの「国有地を不当に安い価格で払い下げた」という問題設定がそもそも誤っていたということになりかねない。

事件全体の構図を捉えるにあたっては、その真偽が非常に重要な部分である。

 

それにも関わらず、野党もマスメディアもこの部分にはほとんど触れてこなかった。

まず、上記沖縄タイムスの記事は、共同通信配信の記事であるにも関わらず、共同通信本体のwebには載らず、沖縄タイムススポニチ(こちらは抜粋版)に載ったのみであった。

ごみの撤去費用「10億円以上」国の見積もり前に財務省想定― スポニチ Sponichi Annex 社会

その後もこの打ち合わせ記録は専ら「埋め戻し」の部分にばかり焦点が当てられ、「地価を上回る瑕疵」という記述は、googleで期間を区切って検索したところ、

森友学園:近畿財務局「校内で廃棄物処分を」 - 毎日新聞

の記事で紹介されている例があるのみであった。

産経のスクープと称された

【森友学園問題】近畿財務局が産廃の「場内処分」促す 費用増大懸念し埋め戻しか 協議文書を独自入手(1/2ページ) - 産経ニュース

この記事でも、協議文書を入手して全文を参照できる状態にありながら、埋め戻しのことばかりに注目している。

上記リンクの宮本岳志議員の質疑を見ても、地価を上回る瑕疵の存在に関する部分は抜け落ちている。

発端の2/24から1ヶ月以上経過したここ数日になってやっと、おそらく和田政宗議員のブログ記事が最も強い契機としてはたらき、「地価を上回る瑕疵」の記述が注目されるようになった。

 

事件の構図そのものを左右しかねない重大事案にも関わらず、なぜこれまでこのように軽視されてきたのだろうか。

森友学園問題が報じられだした当初、読売新聞が森友学園問題をろくに報じないことが、安倍政権を慮った意図的なものではないかと疑問視されたが、その伝でいけば、こちらも疑問視して良さそうである。

たとえ可能性であっても、「国有地を不当に安い価格で払い下げた」というストーリーを覆すような内容は報じない、という意図があってあえて報じなかったのではないか、と。

 

森友学園問題:葉梨議員は手紙の日付を削除したのか

先日の話題に関連して、籠池氏が谷氏に送った手紙に記載されたいた日付の表記を葉梨議員が削除したのかという点について検討する。

まず、2017/4/1放送の「ウェークアップ!ぷらす」内で、玉木雄一郎議員がこの疑惑を葉梨議員に直接問いただしたところ、以下の返答となったとのことであるので、引用させて頂く。

私はこの説明は相当程度信用しうると思う。なぜならば、葉梨議員は例えば籠池氏の証人喚問において、封書に残された消印の日付(こちらも平成27年10月26日付)を示し、籠池氏の認識違いを指摘している。もしこのとき手紙自体に日付が記されているのであれば、それを追加証拠として示さない理由がない。

葉梨議員の理屈では、安倍昭恵がこの陳情書(手紙)の存在を知った上で名誉校長になったのか否かによって安倍昭恵の関与の度合いが変わり、名誉校長になった後で送られたのであれば安倍昭恵の関与はないということである。

この理屈を最初聞いた時は、逆では?と思ったが、自民党が重視しているのは安倍昭恵の主体的関与の有無であって陳情書の効力の大小ではないので、同意するかは別として、理屈としての整合性は取れている。

従って自民党としては安倍昭恵が名誉校長になった後に陳情書が送られたことを強調したいのであるから、そのことを示す証拠となる部分をわざわざ削る必要性がないのである。

 

ちなみにこの日付の部分の筆跡を見ると、たまたまかもしれないが、数字の「2」の書き方が「250万円/月」のところで書かれている「2」の書き方と異なる。

この日付も2ページ目中段部分と同じく籠池諄子氏の筆によるものなのだろうか。

 

森友学園問題:アキエリークス「あの手紙」に記された日付について

あの手紙 – アキエリークス

こちらには籠池氏が谷氏に送付した手紙の原本とみられる内容の画像が提示されている。

内容は既報のとおりであるが、先頭の「小学校敷地の件について」の右に「(H27・10・26)」と日付の記載があることが話題になっている。

そこから派生して、自民党の葉梨議員が日付を消した云々という話題になっているようである。その真偽・是非はさておき、私は別の視点で見てみたい。

これは先日の自民党記者会見で当の葉梨議員が触れていた点であるが、籠池氏は証人喚問において、籠池氏が安倍昭恵に電話をしたこと、及び谷氏に手紙を送付したのが安倍昭恵の名誉校長就任前であることを述べている。

しかもそれは単に述べたのではなく、午前中に述べたことを訂正するという文脈で述べている。

今突き合わせてみたらハフィントンポストのテキスト中継がかなり省略含みであることに気がついたので、自前で当該部分を文字起こしする。

葉梨:午前中の参議院の質疑の中で、民進党の議員の方からの質問でした、昭恵夫人に一回だけお願いをしたことがあります。ということを言われました。午前中のお話では、平成27年の10月頃に、昭恵夫人の携帯に籠池さんが電話をされて、留守電に入れておいた、ということですが、これについて返信はありましたか。

籠池:返信の方はございません。今のことについて参議院でお話させていただいたことちょっと訂正をさせていただきますが、昭恵夫人が当学園の名誉校長になられる前のことでございました。それだけお伝えいたします。

葉梨:昭恵夫人が名誉校長になられたのは平成27年の9月で間違いございませんね。

籠池:その通りでございます。

葉梨:平成27年の9月に名誉校長になられてその後に昭恵夫人の付の職員にあなた手紙を書かれたことはありますか。

籠池:今の時系列の違いですが、昭恵夫人が名誉校長になられる前に私は手紙を書いたことはあります。

その後葉梨議員は、封書に押された消印の日付から、籠池氏の上記発言が「間違い」であると指摘した。

本日、この手紙が実際に平成27年10月26日という、安倍昭恵が名誉校長になった後に書かれたものであるという事実(と推定される)がリークされたため、籠池氏は間違った内容を話していたことが決定的となりそうである。

なぜ間違った内容を、わざわざ前の答弁を訂正するという形を取ってまで籠池氏は述べたのだろうか。葉梨議員が言うように、安倍昭恵が陳情の存在を知った上で名誉校長になったと印象づけるためだったのだろうか。

偽証罪が成立するかどうかについては、安倍晋三記念小学校と記された振込用紙を使っていた時期であるとか、安倍昭恵からの寄付の有無であるとかについてばかり論じられているが、実は本丸はこちら(及び籠池氏が業者と財務局の打ち合わせ記録について知らないと述べた点)のように思われる。

 

 (追記)

よく考えたら「平成27年度予算化されていないことが9月末発覚し」と書いてあるから、日付がなくてもそれだけで名誉校長就任後に送ったのは明らかだと気づいた。

どちらを理由にするにせよ証人喚問の答弁とは食い違うので、論旨には影響はない。

森友学園問題:「業者側の記録」文字起こし

以前からテレビ等の報道ではチラ見えしていて、全文を読みたいとずっと思っていたこの記録が、自民党の記者会見動画で判読可能となったことに加え、和田政宗議員が言っていた「真相」の根拠がこの記録だったことが明らかになった

森友学園国有地取得経過の真実を明かします|参議院議員 和田政宗オフィシャルブログ Powered by Ameba

ので、時間をかける意義を感じ、ここに文字起こし?する。

www.youtube.com

この記録に関する内容は12分15秒あたりから始まる。

以下書き起こすが、いくつかある、筆跡からして籠池氏とみられる(と自民党が主張する)書き込みについては除外するものとする。日時や参加者等のヘッダ部分も省略する。

 

中道組:先日現場立ち合いにてご確認頂きました汚染土に含まれている産廃と地中埋設物除去範囲に含まれている産廃処分につきまして予算計上可能か否か今後の施工計画について打合せする必要があるのでお時間頂戴いたしました。

財務局:土壌改良及び地中埋設物除去範囲の産廃量及び金額を教えていただけないでしょうか。

中道組:汚染土に含まれる産廃は既に処分しましたが701.5tで約400万円となり、地中埋設物除去範囲に含まれる産廃は北東部のみの900tで仕分処分費が高く@¥38,500/tとなり約4000万円になり、北西部にも産廃含有が見込まれておりますのですべて撤去となると膨大な金額となる為、工事を進めてよいものか判断いただきたい。

財務局:まず、汚染土の産廃仕分け処分費(@4,800円/t)と地中埋設物除去範囲の仕分け産廃処分費(@38,500円/t)の違いについて説明願います。

中道組:汚染土処分業者と産廃処分業者との単価違いの為、安価な業者があれば推薦願いたい。

財務局:業者が違うから単価が違うでは上層部への説明がつかないのと北東部分だけの産廃だけで約4000万円もかけ、北西部他地域の予測される産廃処分を併せて考慮するとそもそも地価を上回る瑕疵が発生する国有地を貸し出しすることは出来ないので契約取止めになる。

キアラ:産廃処分費に予算がつかないのであれば、基本的に建築工事に支障はないので場外に出さない方法を考えるしかないと思われる。

財務局:出来ればキアラ設計に場外処分を極力減らす計画を考えてもらえないか。

キアラ:建築工事で掘削深度は1.5mから2mぐらいであるので深い部分にある産廃は影響ないが出土した産廃を場内処分する方法も考えるが森友学園への説明方法も難しい。

財務局:建築に支障ある産廃及び汚染土は瑕疵にあたる為、費用負担義務が生じるがそれ以外の産廃残土処分が通常の10倍では到底予算がつかないが借主との紛争も避けたいので場内処分の方向で協力お願い致します。

キアラ:小学校の開校も延びたので設計段階で可能な限りの場内処分計画を検討します。

中道組:9/10から東側から埋設物撤去作業にはいるので契約通り3mの掘削実施し、ガラ振い分けを行い残土は埋め戻させて頂きます。

財務局:来週の月か火曜日に現地確認させて頂きます。工事を進めていく上で問題があれば相談には随時対応いたしますが、2期工事の見積資料も頂戴したいのでよろしくお願いします。

中道組:これから2期工事の見積書も作成しますので森友学園様からの了解も頂いた上で提出させて頂きますが以前保留となっていました、樹木、アスファルト撤去費用と処分費については補助対象の結果は出ましたか。

財務局:撤去費用は補助対象としますが処分費は補助対象外となりました。

キアラ:我々の立場で申し上げることではないので2期工事分と汚染度産廃処分費、既設管モルタル注入費は追加工事として契約計上し、場内処分方法も検討します。

財務局:よろしくお願いします。

 

以上である。これを埋め戻し指示の証拠とみなす向きがいそうなので念のため補足しておくと、「『ガラ振い分けを行い』残土は埋め戻させて頂きます」ということである。

建設現場で発生した残土を産廃だという人と、残土は産廃でないと言... - Yahoo!知恵袋

森友学園問題:「ゼロ回答」についてもう一点

ゼロ回答論批判として広く人口に膾炙しているのがこの記事だと思う。

ゼロ回答ではなく、「口利きの顛末」を報告した文書~安倍夫人付き政府職員発のFAX~: 醍醐聰のブログ

こちらではこれまで本ブログで触れてこなかった、「3) 土壌汚染や埋蔵物の撤去期間に関する賃料の扱い」について、

売却時の価格に言及~国有財産の売却に安倍夫人が関与した証拠~ 

とみなしている。

いわく、

ここで注目されるのは、定期借地契約で謳われた買受特約を将来、森友学園が行使する場合、埋蔵物の撤去費用は買受価格から差し引かれることを籠池氏側に、この政府職員が伝えている点である。

安倍夫人付きの政府職員が安倍夫人に寄せられた籠池氏の依頼を受けて財務局国有財産審理室長に問い合わせをした結果を籠池氏に伝えた文書の中で、将来の買受価格の算定に関する財務省の考え方が含まれていたことは、昭恵氏の関与が定借の条件変更にとどまらず、買受にも及んでいた事実を示すものであり、安倍首相が繰り返し否定した、「私の妻が国有地の売却に関与した」証拠として重大な意味を持つ 

とのことである。

当該記事においては回答FAX 3)の内容を以下のように

「3 土壌汚染や埋蔵物の撤去期間に関する賃料の扱い
・・・・土壌汚染の存在期間中も賃料が発生することは契約書上で了承済みとなっている。撤去に要した費用は、第6条に基づいて買受の際に考慮される。」

一部「・・・・」で省略してしまっているが、省略されていない本文は以下の通りである。

3) 土壌汚染や埋設物の撤去期間に関する賃料の扱い

平成27年5月29日付 EW第38号「国有財産有償貸付合意書」第5条に基づき、土壌汚染の存在期間中も賃料が発生することは契約書上で了承済みとなっている。撤去に要した費用は、第6条に基づいて買受の際に考慮される。

森友学園:安倍昭恵夫人付官邸職員の回答ファクス(全文) - 毎日新聞

つまりこの「第6条」というのは「EW第38号『国有財産有償貸付合意書』」の中の条文であり、その合意書はもちろん森友学園も了解済みの既知の内容であるから、その内容に基づく事柄を知らせたところで何か特別な意味があるということはない。

ところで当該記事の書きぶりであると、安倍昭恵が定借に関与しただけでは「私の妻が国有地の売却に関与した」に当てはまらないかのようであるが、今回の国と森友学園との契約については、その成立過程等を考慮すれば、定借期間から売買に至るまでを一体のものとしてみなすのが適当であり、「定借には関与したが売却には関与していない」式の言い逃れは、そもそも通用しないと言うべきであろう。

 

ちなみに「撤去に要した費用は、第6条に基づいて買受の際に考慮される」の部分は、既に佐川理財局長により「誤りである」と指摘されている。

この「国有財産有償貸付合意書」が今の段階ではネット上ではおそらく参照できないので曖昧な部分を含むが、玉木雄一郎議員のツイートによると第6条とは以下のような内容であるという。

6条には複数の決め事があり、土壌汚染の処理費用については2項ではなく3項で処理するというのは国も森友学園も承知しているところである。それゆえにいつ返金するという議論になっている。

そんな中で、まるで処理費用が2項で処理されるかのような記述をされてしまうのは、森友学園側からしてみれば混乱するだけだったのではないか。

 

森友学園問題:共産党・大門議員の「満額回答」論を批判する

「ゼロ回答」論者はFAXの2枚目を見ない、という議論がSNS界隈では盛んであるが、それに対し私は、「陳情書と回答とを比較検討しないとそれがゼロ回答であったかを判断できないのが当然なのに、ゼロ回答否定論者は陳情書を見ないままで判断している」という論旨のことを書こうと思っていた。

そんな中で飛び込んできたニュースがこれである。

昭恵氏付職員に買い取り陳情=籠池氏が手紙で-参院決算委:時事ドットコム

 大門氏によると、手紙は2015年10月26日付。政府が表書きを公表した書簡と同一とみられる。この中で籠池氏は、早期買い取りや賃料の半減などを要望。同学園は16年6月に国有地を格安で購入しており、大門氏は「籠池氏の要望は全て実現している。満額回答だ」との見方を示した。

この手紙の内容は割合に早い段階で流出していて、3月25日のとくダネ!で放映された以下の映像を元に、2chでは既に解読がなされている。

f:id:barelo:20170329021025j:plain

画像一番左のコピーは自民党の葉梨議員が証人喚問やその後のテレビ出演で紹介しているのをご記憶の方も多いだろう。

2chで「籠池の手紙」として貼られている内容を全文引用すると、以下のようになる。誤字等はママとする。

小学校敷地の件について

小学校用地として豊中市野田1501の国有地を
売買予約附定期借地として契約。(国土交通省航空局の土地)
                交渉先は近畿財務局
当方としても買収をしたかったが資金調達都合があったので
10年以内に購入希望としたところ、10年定借という当方にとっては
切迫感のある契約となった。事業用定借というのは長期間借
りることにより経営が安定するのだが、長期間使用する必要がある学校という扱いが財務省
側はしていないので
非常に不安である。
学校が事業用地で定借10年は短すぎ(10年以内に買い取り
し、それが出来なければ建物を取り壊して原状に復する)。10年で
買い取るつもりであるが、事業環境が買わたりするので、
やはり50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更
したいのです。でないと安心して教育に専念できない。
買い取り価格もべらぼうに高いのでビックリしている。
??に現在、借地契約のあと、土壌汚染や埋蔵物(ガラなど
撤去しており、本屋位国が契約前に撤去するか、撤去を
???間は、賃借料(2500万/月)が発生しないのが民民契約
???国との契約だから従ってもらわねばならぬ、ということ
??至る。建物建築時から借料が発生するのが本来で
??おかしいと思う。

安倍総理が掲げている政策を促進する為に
※国有財産(土地)の賃借料を50%に引き下げて
 運用の活性化を図るということです。
※学校の用地が半値で借りられたらありがたいことです。


??関係してですが、平成27年2月契約事前の段階で、財務と航空の調整の中で、学園側が工事費を立て替え
??して、平成27年度予算で返金する約束でしたが、平成27年度予算化されていないこ
???9月末発覚し、平成28年度当初に返金されるという考えられないことも生じてい
??11月中に地表工事が????に、4ヶ月間のギャップはどう考えているのか
???人間の感覚が変です。4ヶ月間の利息は? ふりまわされています。



??? と、当方の契約書を同封いたしますので
??願いします。

              籠池 拝
 

読んでみると確かに「早い時期に買い取るという形に契約変更」という記述はある。

大門議員はこの記述を意図的にフレームアップし、「実は一番の眼目は、早く買い取ることはできませんか、ということ」と(理由の説明なく)解説している。そのような解釈は全く無理があると私には思われるので、以下に理由を記す。

まず、籠池氏は証人喚問冒頭の陳述で、この陳情について以下のように述べていた。

【森友学園】籠池理事長、参院の証人喚問で明言「昭恵夫人から100万円を受け取った」(テキスト中継)

平成27年5月29日に定期借地契約を締結いたしました。その土地の買い上げの条件として、10年たったのをもっと長い期間へと変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けを頂こうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年10月のことです。

「10年たった(ママ)のをもっと長い期間へと変更できないかとの思いから」と、借地契約期間の延長が目的であるとはっきり述べている。早期買い取りの話などどこにも出てこない。眼目がそこにはなかったのが明らかではないか。

次に手紙そのものを読み解いてみる。「早い時期に買い取るという形に契約変更」の周辺をよく読んでいただきたい。読みやすさのため再度部分的に引用すると、

10年で買い取るつもりであるが、事業環境が買わたりするので、やはり50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更したいのです

とある。

もし本当に早期に買い取ること自体が目的なのであれば、50年定借に変更したいというのは要望との関係性が不明である。契約当初、森友学園は当該土地を8年後に買い取るという想定であったことは広く知られており、それより早く買いたいのであれば、定借期間の延長という話にはならない。

前段では「10年定借という当方にとっては切迫感のある契約」とも書いてあるので、10年以内に買い取れないケースを想定しての要望であるのは明らかだ。

「早い時期」というのは、「予定通り(8年)から10年ちょっとすぎ、遅くとも15年以内には」程度の意味合いと取るべきだろう。

その解釈のもとで上記引用文に言葉を補うとすれば、例えば以下のようになる。

「10年以内に買い取るつもりではあるが、事業環境の変化によりそれが不可能になることもありえる。そこで、もし10年以内に買い取れなかったとしても問題が起こらないように、10年定借を50年定借に変更して欲しい。50年定借に変更といっても50年後に買い取るということではなく、その定借期間の中でなるべく早い時期の買い取りをめざすものである」

目的はあくまで定借期間の延長であって、「早い時期」というのは当初予定をそんなにも大きく超えるつもりはないという意思を示す意味での記述である。大門議員の解釈と比べてどちらが妥当であるか、各自ご判断されたい。

 

さて、大門議員が「実は一番の眼目は、早く買い取ることはできませんか、ということ」という解釈をしなければならなかった理由は明らかで、それは例のFAXが「満額回答」であるという結論ありきの立論だからである。

まず、平成28年6月という「早い時期」に土地の買い取りがあったという事実に着目した。そしてその事実が論拠たり得るようにするために、「この要望は定借の期間延長が目的ではなく、早期買い取りが目的である」と、要望の内容を都合よく改竄した。そうしておいて、「早い時期に買い取られているから、この要望は実現している」と結論付けるという詭弁を弄したのである。

大門議員は口先では真相の究明をと言いながら、実はこの問題を政局に利用することしか頭にないのではないか。ためにこのような詭弁をもってして意図的に国民を欺いたのではないか。そのような行為は看過できざるところである。

 

オマケ的に、大門議員の詐術についてもうひとつ記す。

大門議員は工事費の立て替え払いの件について説明する時、籠池氏の手紙をそのまま読むことをしなかった。

籠池さんの方はですね、平成27年度予算で工事費を立て替えした分返してくれると言ったのに、28年度に遅れるのは何事か、ということが手紙で来ている

(3/28 参議院 決算委員会 大門実紀史議員の発言より)

そして

年度またいだ28年度といっても、28年4月6日、年度変わった途端に支払われております

(同上)

と述べ、従ってその要望が実現したと説明した。

この部分は国会中継をよく見直してみると説明として成り立っていないのだが、おそらく大門議員は、籠池氏の要望が「早く払ってくれ」という要望だったと要約するのを忘れたのだろう。早く払ってくれと要望し、年度が変わった途端に支払われたのだから要望が実現している、という理屈で説明しようとしたものと推測される。

この理屈自体が「早く」を「年度が変わってから早く」に言い換えた詭弁なのだが、それは私が推測した理屈だからさておくとして、ここで籠池氏の手紙に立ち戻ってもらいたい。籠池氏は

平成28年度当初に返金されるという考えられないこと 

と書いているのである。

大門議員は「当初」の部分をあえて落として読んでいる。そうしないと、年度当初の返金が考えられないと言っているのに、年度が変わった途端に支払われているから要望が実現している、という、筋の通らない説明になってしまうからである。

このような不誠実な議論は大概にしていただきたい。

 

森友学園問題:吹いたのは神風ではなく「酒井旋風」ではなかったか (1)

籠池理事長による「神風が吹いた」発言は、事件を象徴する言葉として後年参照されるものになるかもしれない。

私はこの神風発言にやや胡散臭さを感じる。というのも籠池氏は当初、「神風」がどういうものかについて、山本太郎議員の質問にこう答えている。

【籠池泰典氏証人喚問】詳報(18)「ハシゴを外された」と怒りを覚えた政治家は?「大阪府知事です」 それ以外は?「大阪府知事です」 - 産経ニュース

 山本氏「以前のお言葉で『急に神風が吹いて国有地が手に入った』という趣旨のご発言があったと思うんですね。どんな『神風』だったということなんですかね」

 籠池氏「遅々として進まなかった、定期借地権のときまでは進まなかったんですが、それ以降は非常にスピード感をもって物事が動いていったというふうなことをもって『神風が吹いた』というふうな表現をさせてもらったということです」

衆参両共産党議員とのやりとりでも同様のことを言っている。

森友学園 籠池氏の証人喚問(詳報 23日)

 小池 安倍昭恵さんは、塚本幼稚園で3回目の講演をやったのが15年9月5日です。その2日前に安倍首相は、財務省の理財局長と東京で会っています。塚本幼稚園での昭恵夫人の講演テーマは、瑞穂の国記念小学院についてだと思います。あなたに対して、財務省が前向きに動いているというような話がありましたか。

 籠池 財務省が前向きに動いていると感じたのは、生活ゴミが出てきたあとが著しかったと思います。

 小池 具体的には、生活ゴミが出て、8億円の値引きが行われる過程だと思います。どういう点で、どういう動きをみて、財務省は前向きだというふうに思ったのでしょうか。

 籠池 私どもの弁護士が入っておりましたから、その動き方、スピード感、非常に速かったと思います。

 籠池 定期借地が年間2700万円でしたから、大量のゴミが出てきて、これはかなり問題があると当然思ったわけです。少なくとも2700万円の半分ぐらいになるだろうと直感的に思っていました。ただ、そのまま定期借地をするのであれば、1年間、また開校がずれると大変なので、購入したほうがいいのではないかと考えたということです。

 宮本 あなたは午前中の参議院での答弁で、このときから、財務省が前向きに動いていると感じたと言いました。いったい、どういう力が、そこに働いたなと感じましたか。

 籠池 私は、そのときは神風が吹いたかなと思ったということです。なんらかの見えない力が動いたのではないかなと思いました。

つまり、新たな生活ゴミの発見が神風を呼んだという認識である。

ところが証人喚問終了後の日本外国特派員協会での会見では、神風が吹いた=物事が大きく進み始めたきっかけは、谷氏から送られてきたFAXだと言うのである。ここ数日の論調もそれに引きずられていて、FAXが神風を吹かせた、安倍昭恵は谷氏を通して大きな関与をした、という論調が強まっている。

上掲の通り、籠池氏は証人喚問の場では一貫して新たなゴミが出てきてから物事が急に動いたと言っていた。僅かな間でなぜ認識がこのように変化したのか。FAXが契機だと言ったほうが安倍昭恵の関与を強く示唆することができて都合がいいと誰かに言われたか、あるいは自分で思いついたかしたからではないのか。

おそらく野党はそのような邪推をせずに、田村国有財産審理室長をキーマンとしてFAXと神風を結びつけるストーリーを組み立てるだろうが、私はもっとシンプルに説明できる道を行ってみる。

FAXを含むやりとりは財務省に何の影響も与えなかった。その数カ月後の2016年3月、杭打ち工事の過程で新たな埋設物が発見される。それは新たなプレイヤーを籠池氏側に招き入れる契機となった。

その新たなプレイヤーというのが北浜法律事務所所属・酒井康生弁護士である。彼が交渉に加わったことで事態が急展開した、というのが私の見立てであり、表題の所以となっている。

(続く)