8億円値引きの背景、の予想

森友学園問題が再燃の気配を見せているので、現時点で私が考える8億円値引きの背景を、箇条書き的に一度まとめておく。

 

・国有財産に関して、撤去費用が売却額を上回るような土地は、基本的には売却・貸付ができない決まりになっている。

・売却・貸付ができなくなれば、国と森友学園との契約は、国の事情により解除せざるを得なくなる。

・契約解除という事態になれば、国側は森友学園に対し、数十億円の損害賠償を支払うことが想定される(上物も建ってしまっているため)

 ・したがって、近畿財務局は、リスク回避の観点から、取引をまとめることに対する強い動機があった。

 

・近畿財務局は、当該土地の地下埋設物の撤去費用が、地価を上回る可能性が十分にあると判断した。

 ・第三者が撤去費用を見積もると、売却額を上回る見積額となる可能性を排除できない。

・そこで近畿財務局は大阪航空局と共謀し、最終的な売却額が国・森友学園の双方にとって都合のいい額になるよう、八百長見積りを行った。

 

黒塗りの下には本当に「安倍晋三記念小学院」と書かれているのか

[国会ウォッチャー]設置趣意書に安倍晋三と入れるのは学校経営のノウハウ

黒塗りのタイトルの下に「安倍晋三記念小学院」と書かれていて、だから黒塗りされているというのは、まことに「さもありなん」という推理である。そう書いた理由・隠す理由のどちらにも不自然な点はない。

しかしどうしても引っかからざるをえないのが、黒塗りされた字幅には「安倍晋三記念小学院」という文字は入り切らないのではないかという、物理的制約からくる疑問である。

わかりやすい画像つきツイートがあったので引用させていただく。

更なるわかりやすさのために加工したのが以下の画像である。

f:id:barelo:20170508232016j:plain

黒塗りの部分が「設置趣意書」の部分と同じ文字サイズ・文字間隔だと仮定すると、5文字から6文字分のスペースしかないことが明らかである。

タイトル部分の左右には十分な余白があるため、黒塗りの部分だけ文字数が極端に小さくなるというのは書類の体裁として考えにくい。

仮にここに5文字入っているのだとしたら、「安倍晋三」は抜きで、単に「記念小学校」とだけ入っているのではないだろうか。

というのは以下にある通り、「記念小学校」というのはそれなりの公式性をもって使われている名称だからである。

いかにもスカりそうな予感がするが、鮮度が命のネタと思われるので書き留めておく。

「なぜ大阪音大ではなかったのか?」は政府により説明されている

加計学園と森友学園を巡って、政府が答えるべきたった二つの質問 - 読む国会

では、政府が果たすべき説明責任とはなんなのだろうか?

森友学園の問題に対しては「なぜ大阪音大ではなかったのか?」

(略)

これに答えるだけでもいい。 

 

衆議院会議録情報 第193回国会 決算行政監視委員会 第1号

○石関委員 先ほどの御答弁で、森友学園以前に別の学校法人から買いたいという申し出があったために移管をしないでそのまま国が持っていたということだったと思いますが、これはどういう学校法人だったんですか。
○佐藤政府参考人 個別具体的な名称についてでございますけれども、大阪音大というところなんですけれども、大阪音大から平成二十二年の七月にまず一回目の買い受け要望書の提出がございまして、このときは、実は事業計画書の中身が不十分だったために受理には至らなかったということでございます。
 その後、平成二十三年七月に二回目の要望書の提出がございまして、このときもやはり事業計画書が不十分だったということで受理に至らず、さらに翌年の平成二十四年の一月に三回目の要望書の提出があって、このときは計画がしっかりしてございましたのでこれを受理し、平成二十四年の三月に、大阪航空局から近畿財務局に対しまして、この大阪音大への売り払いを内容とする処分の依頼を行ったということでございます。
○石関委員 では、結局、この音大が買えなくなってしまったということですね。その経緯を教えてもらえますか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども御答弁いたしましたけれども、大阪音大からは平成二十四年の一月に三回目の取得要望書の提出があって、三月に、私ども大阪航空局から近畿財務局に対し、売り払いを内容とする処分依頼をしてございます。
 その後、これは近畿財務局と大阪音大の方でやりとりがあったと思いますけれども、最終的には平成二十四年の七月に大阪音大が買い受け要望書の取り下げ書を提出してきたということでございます。
○石関委員 その取り下げた理由というのは承知されているんですか。
○中尾政府参考人 お答えいたします。
 本件土地につきまして、先ほど国土交通省側から御説明がございましたとおり、平成二十四年三月に、大阪航空局から近畿財務局に対しましての、学校法人に対する時価売り払いを内容とする処分依頼を受理してございます。
 その後、七月までの間でございますけれども、国有財産は当然のことながら時価で売却する必要がございまして、当時はまだ、今問題となっております、昨年三月に発見されました新たな地下埋設物が出る前の段階でございます、当時の路線価あるいは公示地価等から見込まれる時価がございまして、一方で、大学のサイドからは、経営上の理由ということだったと承知しておりますけれども、七億円ぐらいしか出せない、そういうお話がございまして、時価でないと売れませんということで、学校法人の側から要望書を取り下げられたというふうな経緯でございます。
○石関委員 そうすると、その段階では土地に問題が見つかったとかそういうことではなかった、普通の土地だというふうにそれぞれ認識していたけれども、音大の方でお金が足りなくて買えないのでやはりやめます、こういうことだったということですか。
○中尾政府参考人 お答えいたします。
 本件土地に関するいわゆる瑕疵と申しますものは、大きく二つございます。
 一つは、森友学園に貸し付けた後、森友学園がいわゆる有益費で除去いたしました一億三千万円相当分でございますけれども、これは実は国土交通省の方で既に平成二十二年当時の調査でわかっておった瑕疵でございます。これは、土壌汚染でございますとか浅い部分までのコンクリートがら等の埋設物でございます。
 この状況は、平成二十四年当時の大阪音大とのやりとりの中でもお互いわかっておった事実でございます。そこがわかった上で七億、その分を差っ引いても五億八千万程度ということでございまして、時価がそれより高いと想定されましたので、大阪音大の方で要望を取り下げられたという経緯でございます。
○石関委員 その一次的な瑕疵は承知の上で取引をしようと思ったけれども、結局、買いたいという方がお金が足りなくてやめますということで売却できなかったということですか。ただ、そういう交渉もしていたので、そこの部分は空港会社に移管をしないでそのまま国が保持することになった、こういうことですね。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 新関空会社の承継という観点からは、今御指摘のとおりでございます。

要するに、大阪音大が提示した額が想定時価に比べて安かったため、売却できなかったというだけのことである。この時の想定時価は上記答弁では明確にされていないが、約9億円超であったことが報道により明らかになっている。

国有地、大阪音大が7億円で購入意向…12年 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

大学側は12年1月に買い取りの意向を示し、最大7億円を出せると表明したという。しかし、国側は当時の時価9億円超での売却を希望。大学側は同年7月、購入を断念した。

毎日新聞の記事であるが、毎日新聞本体のサイトから記事が消えているので、琉球新報より孫引き)

大阪音大に7億円なり5億8千万円なりで売却すれば、国有地の時価売り払いの原則を外れるため、それは不当あるいは違法な取り引きとなる。不当・違法な取り引きを行わなかったことに何の問題があろうか。

 

一方、森友学園に対する売却は、更地価格約9億5千万円から地下埋設物撤去費用相当額の約8億2千万円を差し引いた約1億3千万円であり、まさに時価で売却しているので、これは原則に則った正当あるいは適法な取り引きである。

ただしその正当性・適法性には、地下埋設物撤去費用の見積が妥当なものであるという限りにおいて、という条件がつく。それゆえにこの取り引きの正当性・適法性を検証している者は皆、あれこれ知恵を絞ってその見積の妥当性を問うているのである。

「なぜ大阪音大ではなかったのか?」を政府が答えたからといって、見積りの妥当性の問題がどこかへ消えていってしまい、森友学園との契約の正当性が示されるということには決してならない。

 

大阪音大に売らなかった理由を答えればそれで説明責任は果たされるなどというのは、全く成り立たない議論であるばかりか、見積りの妥当性の検証に精を出している者たち(野党議員を含む)を愚弄する暴論である。

 

「別にいいのでは」と思わなくなった理由

消防車でうどん店寄る 一宮市消防団員7人:社会:中日新聞(CHUNICHI Web)

うどん店に消防車で行った消防団員のなにが問題か 「別にいいのでは」で済まない理由

私もこのニュースをチラッと目にしていたぐらいの頃は「別にいいのでは」と思っていた。

だがbuzzfeedの記事を読んだところで「うーむ」という感じになり、以下のツイートを読んだ今は「やっぱり良くないかな」と思っている。

 

ところでブコメではこの記事を書いたbuzzfeedの瀬谷記者がやたら叩かれているが、安易にネット上の論調になびかず、取材して得た情報を提示してくれたことに、私はむしろ拍手を贈りたい。同調圧力などまっぴらゴメンだ。

 

「藤原(工業)が承認」?

財務省、森友との契約「特例」 面会時、籠池氏が録音:朝日新聞デジタル

こちらで聴ける録音データの中でまず一点不自然に感じたのが、開始30秒あたりの

藤原(工業)が承認をしてということでありましたんで

の部分である。

編集で切られたこの後の内容を聞けばわかるのかもしれないが、なぜここで藤原工業の名前が出てくるのかがわからない。

確かにやや不明瞭ながら「藤原」と言っているように聞こえるが、田村室長の立場で工事業者の名前まで把握しているのだろうか。そうだとしても、初対面の人物に対して「藤原」と呼び捨てにする形はとらないだろう。

100回くらい聴き返して得た結論は、ここは「こちら側の承認」が正しい、である。

これなら文脈的にもしっくりくる。

森友学園問題:「場内処分」発言をしたのは航空局職員かもしれない

突如ひらめいたのでメモ。

例の打ち合わせには、行政側からは近畿財務局の職員と大阪航空局の職員が参加しているが、記録上、発言者は全て「財務局」として記載されている。大阪航空局の職員は、ただ同席しただけで黙っていただのだろうか?

それは不自然なので、あるいはこれは業者が便宜上、行政側の発言を全て「財務局」として記載しただけで、実際は航空局の職員の発言も混ざっているのかもしれない。

そもそもこの有益費は財務局ではなく航空局が支払うものであり、その予算についてあれこれ発言するのはむしろ航空局の職員ではないだろうか。

仮に場内処分云々が航空局職員の発言だったとしたら、佐川局長が池田統括官に確認し、そのような発言をした記憶はないと述べた点は、(厳密に言えば)虚偽ではないことになる。

野党はこの点を財務省にばかり確認しているように思うが、国交省にもしっかり確認をとっているのだろうか。

 

森友学園問題:財務省のデータ復元可能性について

保存期間1年未満の行政文書について

最近評判の国会ウォッチャー氏が民進党・高井議員の質疑を高く評価していたので、録画映像を見てみたところ、明らかに問題があると思われる点があったので指摘しておく。

ポイントとなる発言を、以下文字起こしする。

紙の文書であればですね、まあ焼却なりしてしまえばこれはもうどうしようもありません。復元はできません。

しかしですね、今の時代ですね、皆さんパソコンで文書は作っているわけです。まさかね、手書きで全部メモを取ってるわけはありません。

で、このパソコンで作った場合はですね、このデジタルデータというのはそのものはですね、無くせないんですよ。

これもう、文書管理システムのようなところからはまあ消去、まあ私はね、そんな仕事終わるたびに消去なんて絶対してないと思いますけど、まあでもそれやってるんだと、百歩譲っておっしゃるんであってね、まあそのいちいち仕事終わるたびに消去してるんだと言ったとしてもそれは文書管理システム上の表面から消去してるだけであって、必ずパソコンのハードディスクやサーバの中には残ってます。

これはですね、私もITをずっとやってきましたし、念のためいろんなITの専門家にも確認しましたけど、ま、これ絶対無くせないってわけじゃありません。まあ相当なお金と手間をかけて、パソコン自体をもう初期化してしまうようなものすごい作業をやれば消すこともできます。

しかしそんなものをですね、やってるはずがないと。だからこそ普通はみんなドリルで穴を開けたりですね、もう海に捨てたりですね、するわけですよ。

そしてそのようなすごいシステムを財務省は導入しているのかという点についての質疑をはさみ、こう続ける。

そんなですね、システムを入れてたら予算書とかに必ず出てきますから後でわかりますから、入れてないんですよ、絶対に。

で、だから必ず残ってるんです。残ってますよ。残ってる前提でこのあと質疑しますが…

高井議員の発言に基づけば、相当なコストを掛けてパソコンを初期化しない限り、デジタルデータは必ず復元できるということになってしまう。これはおかしい。

コストを掛けてデータを消去するのは、データを「確実に復元不能にする」ことが目的である。そのような作業をしていない状態では、データは「復元できるかもしれないし、復元できないかもしれない」というのが正しい理解であろう。

高井議員は「念のためいろんなITの専門家にも確認しました」と言っているが、それら専門家は必ずデータが復元できると言ったのであろうか。そう言ったのだとしたらその「専門家」というのは誰なのかをぜひ聞いてみたいものである。

どのような時にデータを復元できるかについてはデータ復元に関する文章を別途参照していただきたいが、私の感覚で言えば、頻繁に書き込みがある文書管理システムのサーバ上のデータについては、おそらく復元は不可能であろう。各職員の利用する端末上のデータについては、定期的なデフラグ等が実行されていない限り、そこそこの復元可能性があると思われる。

従って、確実にデータが復元できるはずとの前提に立ち、仮にデータ復元が不可能であった場合に、それが財務省による証拠隠滅・隠蔽工作によるものと理解してしまうと、それは事態を正しく認識できていないことになる。

また、仮に各職員の利用する端末上のデータを復旧できたとして、それを行政文書として取り扱っていいかについては、慎重かつ抑制的であるべきだと思う。

そうしないと、今回はいいとしても、今後何かの時に「神の手」があらわれて、政権や行政機関にとって大変都合のいいデータを「発掘」してこないとも限らないからである。

 

ところで、共産党宮本岳志議員は4月12日の財務金融委員会において、朝日新聞

森友との交渉記録、データ復元の可能性 財務省認める:朝日新聞デジタル

この記事を引用し、「パソコン内のデータの復元可能性は極めて高いと思う」と発言した。

“森友”面会記録 財務省「復元できない」(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース

この発言がどういう経緯から出たのか、その直前の宮本議員の発言を見てみよう。

データの上書きというのはパソコンのハードディスクの容量上限のデータが保存されてはじめて上書きされていくものでありますから、財務省のシステムでは、ハードディスクの容量の空きがあっても勝手に上書きされると、こういうことになっているんですかね。

当該発言は、上記質問に対する佐川理財局長の答弁を受けて、こう述べた中でのものである。

いずれにせよ、ハードディスクの容量上限まで利用するというようなことは、ちょっと想定されませんので、近畿財務局内の、財務局のパソコン内のデータの復元可能性は極めて高いと思うんですね。

ハードディスクの仕組みについて、私の認識するところとはずいぶん異なる解説であるが、おそらく共産党事務所のパソコンではそのような非常に便利なファイルシステムを利用しているのであろう。ぜひ広く一般に公開していただきたいものだ。