森友学園問題:共産党・大門議員の「満額回答」論を批判する

「ゼロ回答」論者はFAXの2枚目を見ない、という議論がSNS界隈では盛んであるが、それに対し私は、「陳情書と回答とを比較検討しないとそれがゼロ回答であったかを判断できないのが当然なのに、ゼロ回答否定論者は陳情書を見ないままで判断している」という論旨のことを書こうと思っていた。

そんな中で飛び込んできたニュースがこれである。

昭恵氏付職員に買い取り陳情=籠池氏が手紙で-参院決算委:時事ドットコム

 大門氏によると、手紙は2015年10月26日付。政府が表書きを公表した書簡と同一とみられる。この中で籠池氏は、早期買い取りや賃料の半減などを要望。同学園は16年6月に国有地を格安で購入しており、大門氏は「籠池氏の要望は全て実現している。満額回答だ」との見方を示した。

この手紙の内容は割合に早い段階で流出していて、3月25日のとくダネ!で放映された以下の映像を元に、2chでは既に解読がなされている。

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画像一番左のコピーは自民党の葉梨議員が証人喚問やその後のテレビ出演で紹介しているのをご記憶の方も多いだろう。

2chで「籠池の手紙」として貼られている内容を全文引用すると、以下のようになる。誤字等はママとする。

小学校敷地の件について

小学校用地として豊中市野田1501の国有地を
売買予約附定期借地として契約。(国土交通省航空局の土地)
                交渉先は近畿財務局
当方としても買収をしたかったが資金調達都合があったので
10年以内に購入希望としたところ、10年定借という当方にとっては
切迫感のある契約となった。事業用定借というのは長期間借
りることにより経営が安定するのだが、長期間使用する必要がある学校という扱いが財務省
側はしていないので
非常に不安である。
学校が事業用地で定借10年は短すぎ(10年以内に買い取り
し、それが出来なければ建物を取り壊して原状に復する)。10年で
買い取るつもりであるが、事業環境が買わたりするので、
やはり50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更
したいのです。でないと安心して教育に専念できない。
買い取り価格もべらぼうに高いのでビックリしている。
??に現在、借地契約のあと、土壌汚染や埋蔵物(ガラなど
撤去しており、本屋位国が契約前に撤去するか、撤去を
???間は、賃借料(2500万/月)が発生しないのが民民契約
???国との契約だから従ってもらわねばならぬ、ということ
??至る。建物建築時から借料が発生するのが本来で
??おかしいと思う。

安倍総理が掲げている政策を促進する為に
※国有財産(土地)の賃借料を50%に引き下げて
 運用の活性化を図るということです。
※学校の用地が半値で借りられたらありがたいことです。


??関係してですが、平成27年2月契約事前の段階で、財務と航空の調整の中で、学園側が工事費を立て替え
??して、平成27年度予算で返金する約束でしたが、平成27年度予算化されていないこ
???9月末発覚し、平成28年度当初に返金されるという考えられないことも生じてい
??11月中に地表工事が????に、4ヶ月間のギャップはどう考えているのか
???人間の感覚が変です。4ヶ月間の利息は? ふりまわされています。



??? と、当方の契約書を同封いたしますので
??願いします。

              籠池 拝
 

読んでみると確かに「早い時期に買い取るという形に契約変更」という記述はある。

大門議員はこの記述を意図的にフレームアップし、「実は一番の眼目は、早く買い取ることはできませんか、ということ」と(理由の説明なく)解説している。そのような解釈は全く無理があると私には思われるので、以下に理由を記す。

まず、籠池氏は証人喚問冒頭の陳述で、この陳情について以下のように述べていた。

【森友学園】籠池理事長、参院の証人喚問で明言「昭恵夫人から100万円を受け取った」(テキスト中継)

平成27年5月29日に定期借地契約を締結いたしました。その土地の買い上げの条件として、10年たったのをもっと長い期間へと変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けを頂こうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年10月のことです。

「10年たった(ママ)のをもっと長い期間へと変更できないかとの思いから」と、借地契約期間の延長が目的であるとはっきり述べている。早期買い取りの話などどこにも出てこない。眼目がそこにはなかったのが明らかではないか。

次に手紙そのものを読み解いてみる。「早い時期に買い取るという形に契約変更」の周辺をよく読んでいただきたい。読みやすさのため再度部分的に引用すると、

10年で買い取るつもりであるが、事業環境が買わたりするので、やはり50年定借として早い時期に買い取るという形に契約変更したいのです

とある。

もし本当に早期に買い取ること自体が目的なのであれば、50年定借に変更したいというのは要望との関係性が不明である。契約当初、森友学園は当該土地を8年後に買い取るという想定であったことは広く知られており、それより早く買いたいのであれば、定借期間の延長という話にはならない。

前段では「10年定借という当方にとっては切迫感のある契約」とも書いてあるので、10年以内に買い取れないケースを想定しての要望であるのは明らかだ。

「早い時期」というのは、「予定通り(8年)から10年ちょっとすぎ、遅くとも15年以内には」程度の意味合いと取るべきだろう。

その解釈のもとで上記引用文に言葉を補うとすれば、例えば以下のようになる。

「10年以内に買い取るつもりではあるが、事業環境の変化によりそれが不可能になることもありえる。そこで、もし10年以内に買い取れなかったとしても問題が起こらないように、10年定借を50年定借に変更して欲しい。50年定借に変更といっても50年後に買い取るということではなく、その定借期間の中でなるべく早い時期の買い取りをめざすものである」

目的はあくまで定借期間の延長であって、「早い時期」というのは当初予定をそんなにも大きく超えるつもりはないという意思を示す意味での記述である。大門議員の解釈と比べてどちらが妥当であるか、各自ご判断されたい。

 

さて、大門議員が「実は一番の眼目は、早く買い取ることはできませんか、ということ」という解釈をしなければならなかった理由は明らかで、それは例のFAXが「満額回答」であるという結論ありきの立論だからである。

まず、平成28年6月という「早い時期」に土地の買い取りがあったという事実に着目した。そしてその事実が論拠たり得るようにするために、「この要望は定借の期間延長が目的ではなく、早期買い取りが目的である」と、要望の内容を都合よく改竄した。そうしておいて、「早い時期に買い取られているから、この要望は実現している」と結論付けるという詭弁を弄したのである。

大門議員は口先では真相の究明をと言いながら、実はこの問題を政局に利用することしか頭にないのではないか。ためにこのような詭弁をもってして意図的に国民を欺いたのではないか。そのような行為は看過できざるところである。

 

オマケ的に、大門議員の詐術についてもうひとつ記す。

大門議員は工事費の立て替え払いの件について説明する時、籠池氏の手紙をそのまま読むことをしなかった。

籠池さんの方はですね、平成27年度予算で工事費を立て替えした分返してくれると言ったのに、28年度に遅れるのは何事か、ということが手紙で来ている

(3/28 参議院 決算委員会 大門実紀史議員の発言より)

そして

年度またいだ28年度といっても、28年4月6日、年度変わった途端に支払われております

(同上)

と述べ、従ってその要望が実現したと説明した。

この部分は国会中継をよく見直してみると説明として成り立っていないのだが、おそらく大門議員は、籠池氏の要望が「早く払ってくれ」という要望だったと要約するのを忘れたのだろう。早く払ってくれと要望し、年度が変わった途端に支払われたのだから要望が実現している、という理屈で説明しようとしたものと推測される。

この理屈自体が「早く」を「年度が変わってから早く」に言い換えた詭弁なのだが、それは私が推測した理屈だからさておくとして、ここで籠池氏の手紙に立ち戻ってもらいたい。籠池氏は

平成28年度当初に返金されるという考えられないこと 

と書いているのである。

大門議員は「当初」の部分をあえて落として読んでいる。そうしないと、年度当初の返金が考えられないと言っているのに、年度が変わった途端に支払われているから要望が実現している、という、筋の通らない説明になってしまうからである。

このような不誠実な議論は大概にしていただきたい。