森友学園問題:吹いたのは神風ではなく「酒井旋風」ではなかったか (1)

籠池理事長による「神風が吹いた」発言は、事件を象徴する言葉として後年参照されるものになるかもしれない。

私はこの神風発言にやや胡散臭さを感じる。というのも籠池氏は当初、「神風」がどういうものかについて、山本太郎議員の質問にこう答えている。

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 山本氏「以前のお言葉で『急に神風が吹いて国有地が手に入った』という趣旨のご発言があったと思うんですね。どんな『神風』だったということなんですかね」

 籠池氏「遅々として進まなかった、定期借地権のときまでは進まなかったんですが、それ以降は非常にスピード感をもって物事が動いていったというふうなことをもって『神風が吹いた』というふうな表現をさせてもらったということです」

衆参両共産党議員とのやりとりでも同様のことを言っている。

森友学園 籠池氏の証人喚問(詳報 23日)

 小池 安倍昭恵さんは、塚本幼稚園で3回目の講演をやったのが15年9月5日です。その2日前に安倍首相は、財務省の理財局長と東京で会っています。塚本幼稚園での昭恵夫人の講演テーマは、瑞穂の国記念小学院についてだと思います。あなたに対して、財務省が前向きに動いているというような話がありましたか。

 籠池 財務省が前向きに動いていると感じたのは、生活ゴミが出てきたあとが著しかったと思います。

 小池 具体的には、生活ゴミが出て、8億円の値引きが行われる過程だと思います。どういう点で、どういう動きをみて、財務省は前向きだというふうに思ったのでしょうか。

 籠池 私どもの弁護士が入っておりましたから、その動き方、スピード感、非常に速かったと思います。

 籠池 定期借地が年間2700万円でしたから、大量のゴミが出てきて、これはかなり問題があると当然思ったわけです。少なくとも2700万円の半分ぐらいになるだろうと直感的に思っていました。ただ、そのまま定期借地をするのであれば、1年間、また開校がずれると大変なので、購入したほうがいいのではないかと考えたということです。

 宮本 あなたは午前中の参議院での答弁で、このときから、財務省が前向きに動いていると感じたと言いました。いったい、どういう力が、そこに働いたなと感じましたか。

 籠池 私は、そのときは神風が吹いたかなと思ったということです。なんらかの見えない力が動いたのではないかなと思いました。

つまり、新たな生活ゴミの発見が神風を呼んだという認識である。

ところが証人喚問終了後の日本外国特派員協会での会見では、神風が吹いた=物事が大きく進み始めたきっかけは、谷氏から送られてきたFAXだと言うのである。ここ数日の論調もそれに引きずられていて、FAXが神風を吹かせた、安倍昭恵は谷氏を通して大きな関与をした、という論調が強まっている。

上掲の通り、籠池氏は証人喚問の場では一貫して新たなゴミが出てきてから物事が急に動いたと言っていた。僅かな間でなぜ認識がこのように変化したのか。FAXが契機だと言ったほうが安倍昭恵の関与を強く示唆することができて都合がいいと誰かに言われたか、あるいは自分で思いついたかしたからではないのか。

おそらく野党はそのような邪推をせずに、田村国有財産審理室長をキーマンとしてFAXと神風を結びつけるストーリーを組み立てるだろうが、私はもっとシンプルに説明できる道を行ってみる。

FAXを含むやりとりは財務省に何の影響も与えなかった。その数カ月後の2016年3月、杭打ち工事の過程で新たな埋設物が発見される。それは新たなプレイヤーを籠池氏側に招き入れる契機となった。

その新たなプレイヤーというのが北浜法律事務所所属・酒井康生弁護士である。彼が交渉に加わったことで事態が急展開した、というのが私の見立てであり、表題の所以となっている。

(続く)